タムロン 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD Zマウント|旅も日々も一本で頼れる標準ズームレンズ
はじめに
APS-C規格のカメラ向けであるTAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXDは、既存の富士フイルムXマウント用とソニーEマウント用に加えて、2026年7月2日にニコンZマウント用とキヤノンRFマウント用が新たに発売となりました。今回はNikon Z50IIとの組み合わせでちょうど発売日すぐのタイミングで訪れた能登・北陸での写真などをもとに本レンズをご紹介いたします。

■撮影環境:17mm, f/8.0, 1/250秒, +1.0段, ISO100, WB自然光オート, PC:ビビッド
17-70mmの使いやすい画角
多くの標準ズームレンズが35mm判換算で24mmまたは28mmから80mm前後の画角を持つことが多い一方で、今回ご紹介する本レンズの画角は35mm判換算で25.5mmから105mm相当(なおキヤノンでは27.2mmから112mm相当)となります。これは24mmと28mmの間の絶妙な広角から、多くのカメラメーカーの望遠側よりもさらに焦点距離を伸ばした画角となり、「標準ズームレンズではあとちょっと望遠が足りない……」というストレスを解消してくれます。
能登半島地震よりも前から行ってみたかった白米千枚田を訪れました。17mm(35mm判換算25.5mm)と70mm(同 105mm)での画角の違いはこのような感じです。17mmでは広く千枚田の全景を伝えられるのに対し、70mmだとポツンと立つ、印象的な松の木をしっかりとクローズアップして捉えることができました。
▼17mm

■撮影環境:▼17mm, f/8.0, 1/400秒, +0.3段, ISO 200, WB 晴天, PC:スタンダード
▼70mm

■撮影環境:70mm, f/8.0, 1/400秒, +0.3段, ISO 200, WB 晴天, PC:スタンダード
今回は能登半島の先端、珠洲市にある見附島のすぐそばの宿に宿泊しました。地震前、見附島は軍艦の先端、艦橋のように聳え立つ姿が能登を代表する名所のひとつとなっていました。ところが震災で高さが低下し大きく形を変えた、とは耳にしていたのですが、朝になって宿の外へその姿を見に行ってびっくり。地震前の「軍艦のような雄々しい姿」というよりもどこか愛嬌のある姿となった印象でした。この見附島も立ち位置を変えずに17mmと70mmで比較してみると、被写体となる見附島までの距離(約150m)が17mmでは遠く感じられ、70mmだと間近に感じられます。
▼17mm

■撮影環境:f/8.0, 1/640秒, +0.3段, ISO 100, WBオート, PC:スタンダード
▼70mm

■撮影環境:f/8.0, 1/200秒, +0.3段, ISO 100, WBオート, PC:スタンダード
ちなみに、広角側がなぜ35mm判換算で約24mmや約28mmとなる16mmや18mmではなく、17mmなのか。これについてはメーカーによる明言がないため、技術的なことに基づくものなどはっきりしたことはわかりません。しかし以前、NIKKOR Z 26mm f/2.8についての記事で、この26mmという焦点距離が当時のiPhoneの画角(約26mm)に近いということについて触れました。今回、35mm判換算で25.5mmという数字を前にしてふとその話を思い出したのですが、改めて調べてみると現在、私が使用しているiPhone16の画角は約24mmと広くなっており、同じ場所で撮影した写真を比較すると確かにiPhone16の方がやや広く写ることは事実でした。
それでも一眼で撮影しつつ、スマホですぐに使えるようにiPhoneでも……と撮っていると、体感としてはスマホと同じような感覚で撮影できる、という印象でした。一眼離れが取り沙汰される昨今において、似た感覚で撮れる、ということはもしかすると一眼カメラへのハードルを多少なりとも下げてくれるのかもしれません。……知らんけど。(笑)

■撮影環境:17mm, f/2.8, 1/320秒, -0.3段, ISO 200, WBフラッシュ, PC:スタンダード

■撮影環境:26mm, f/1.6, 1/125秒, -2.2段, ISO 32, WBオート
ズーム全域で絞り開放F2.8が使えるメリット
本レンズの大きな魅力のうちの一つがズーム全域で絞り開放F2.8が使えるということです。これにより、ワイドな画角の撮影でも背景ボケを楽しめるとともに、室内など光が少ない場面でも有利となります。
道の駅「すず塩田村」に立ち寄りました。この写真の撮影場所は防波堤を外側に下りた先で、地震前はおそらく海だったところです。地震による地殻変動でこのあたり一帯は隆起し、海だったところが陸地になってから2年半。海だったことが嘘のように草花に覆われ、海はずいぶんと遠く感じられました。その時の心象を現すために、絞りは開放で遠景をぼかして撮影しました。

■撮影環境:17mm, f/2.8, 1/2000秒, +0.7段, ISO 100, WB自然光オート, PC:スタンダード
広角で絞りを開放にした場合に、撮影条件によって気になる点に周辺減光が挙げられます。手持ちでの撮影ですが、絞りを1段ずつ変えて撮影したところ、開放では周辺減光が見られましたが、2段絞るとほぼ気にならなくなりました。
▼F2.8

■撮影環境:17mm, f/2.8, 1/2000秒, +1.3段, ISO 100, WB自然光オート, PC:ビビッド
▼F4.0

■撮影環境:17mm, f/4.0, 1/800秒, +1.3段, ISO 100, WB自然光オート, PC:ビビッド
▼F5.6

■撮影環境:17mm, f/5.6, 1/400秒, +1.3段, ISO 100, WB自然光オート, PC:ビビッド
北陸から戻ってすぐに兵庫県西部にあるハスの名所を訪れたのですが、ここは珍しくハスを間近に楽しめる場所でした。一番望遠側で絞りは開放に設定すること、また被写体にできるだけ近づいたり、レンズのすぐ前に他の花の葉を配置することで、背景や手前に大きなボケを入れての撮影が楽しめました。

■撮影環境:70mm, f/2.8, 1/2000秒, +1.0段, ISO 200, WB自然光オート, PC:スタンダード

■撮影環境:70mm, f/2.8, 1/400秒, +1.3段, ISO 100, WB 4350K, PC:スタンダード
写真におけるボケの楽しみ方として外せないのがやはり玉ボケです。この玉ボケも同じ焦点距離であればF値が小さい方が玉ボケの大きさは大きくなります。一方で開放F値の際に画面の隅の方では玉ボケが真円ではなく端が欠けた形になってしまいますが、こちらも2段絞ると(玉ボケのサイズは小さくなるものの)画面の端の玉ボケに欠けはほぼ見られず、また円形絞りを採用していることから2段絞ってもほぼ真円に近い形状を保っていることがわかります。
▼F2.8

■撮影環境:70mm, f/2.8, 1/320秒, -0.7段, ISO 100, WB 4350K, PC : Tender Clear(フレキシブルカラー)
▼F5.6

■撮影環境:70mm, f/5.6, 1/400秒, -0.7段, ISO 400, WB 4350K, PC : Tender Clear(フレキシブルカラー)
この章の冒頭でも触れたように、絞り開放F2.8が使えるということは、暗所における撮影時にシャッター速度が遅くなりにくく、ISO感度をあまり上げずに済むメリットがあります。
2024年元日の地震に続いて、同じ年の9月に起きた豪雨により壊滅的に近い被害を受けてしまった地域に珠洲市大谷町があります。同地区のスーパーが閉店してしまい買い物に困る地域の方々のため、被害を免れた民家のガレージを間借りして「みんなのスーパー」を立ち上げた方がおられます。それが大谷町のご出身で同じ公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員である頼光さん。彼とは能登半島地震前に大阪でのJPS活動を通して仲良くしていただいていたご縁で、今回の能登行きは彼とみんなのスーパーを訪ねたい!という気持ちから決めた旅先でした。
「民家のガレージ」という店内での撮影は遅めの夕方ということもあり、絞り開放F2.8という明るいレンズのメリットを大いに感じられる時間となりました。なお本レンズにはタムロン独自の手ブレ補正機構が搭載されており、暗所でも安心して手持ち撮影に臨むことができました。地域の方々のみならずこの地を訪れた観光客のちょっとした休憩ポイントともなる同店。ぜひがんばっていただきたいものです!

■撮影環境:17mm, f/2.8, 1/60秒, +0.7段, ISO 800, WB オート, PC:スタンダード
今回の旅では能登半島を訪ねたのちに富山にてもう1泊しました。梅雨の時期の旅において3日目の夕方まではお天気に恵まれたものの、富山に着いた日の夜は雨。本レンズは防塵・防滴ではないものの、防滴用シーリングが施された簡易防滴構造により、外部からの水滴の侵入を防いでくれます。これを活かし、夕食に出かけた帰りに富山駅周辺を少しスナップ。信号待ちをしている路面電車の前に横断歩道があり、横切る人を少々ブラしてフレーミングに入れました。

■撮影環境:70mm, f/2.8, 1/25秒, -0.3段, ISO 1000, WB オート, PC:ビビッド
最短撮影距離が19cmの近接撮影
本レンズの最短撮影距離は、広角端で0.19m(19cm)、望遠端で0.39m(39cm)となっており、特に広角側では大胆に被写体へ寄ることができつつ背景を広く入れたり、大きなボケを得ることができます。望遠側では近付ける距離は倍ほどに伸びるものの、広角側の1:4.8から望遠側では1:5.2と撮影倍率が上がるため、小さな被写体もかなりクローズアップして撮影することができます。
広角側と望遠側のそれぞれにおいて、同じ被写体でピントが合うギリギリまで近付いて撮影してみました。広角側では被写体に寄りつつ背景が広く入ること、望遠側では背景は狭くなるものの倍率が上がり、背景のボケも大きくなることがわかります。
▼17mm

■撮影環境:17mm, f/2.8, 1/1000秒, +1.3段, ISO 100, WB 4550K, PC:スタンダード
▼70mm

■撮影環境:70mm, f/2.8, 1/800秒, +1.3段, ISO 100, WB 4550K, PC:スタンダード
日本国内において唯一、日常的に一般乗用車が波打ち際の砂浜を走ることができる千里浜なぎさドライブウェイ。砂の粒子が非常に細かく、海水を含むことで車が沈まないほど固く締まるからだそうで、その細かな砂の表情を捉えるべくカメラを地面すれすれに近付け、最短撮影距離にピントを合わせて撮影しました。画角は広角側にすることで背景を広く取り、砂浜だけでなく海や空、砂浜に続く車の轍や前方に停まる車の姿を入れた構図にしました。

■撮影環境:17mm, f/8.0, 1/160秒, +0.7段, ISO 100, WB自然光オート, PC:ビビッド
蓮池の足元にとても小さく可愛らしい花が咲いていました。ニワゼキショウとみられるこの花の直径はわずか1.5cm程度。マイクロレンズが欲しくなるサイズ感でしたが、望遠端で捉えることで、適度な背景と共に小さく可憐な姿を収めることができました。

■撮影環境:70mm, f/2.8, 1/1000秒, +1.0段, ISO 200, WB 4500K, PC:スタンダード
旅のスナップ
最後に今回も旅のスナップを焦点距離順にご紹介します。
能登半島から富山へ。さらに翌日の最終日には白川村や郡上八幡を通って岐阜へ南下、その途中で御母衣ダムのMIBOROダムサイドパークへ立ち寄りました。ここは建築物もユニークな場所でしたが、思わず見惚れてしまうようなエメラルドグリーンの水とコンクリートとの対比、そして正面に見えるダムと両脇に聳える山という構図がとても印象的でした。
全体の遠近感を強調しつつ、上下左右を対称的に捉えるために広角端の17mmで撮影。この御母衣ダムは日本で初めて岩石や土砂を積み上げて造られた大規模なロックフィル式ダムなのだそうです。ここはよいお天気の日にまた訪ねてみたい場所です。

■撮影環境:17mm, f/8.0, 1/125秒, +0.7段, ISO 100, WB自然光オート, PC:スタンダード
能登半島の西側を海岸線に沿って北上する途中、地殻変動により元々海だったところが今は陸地となり、その新たな陸地に道を引き直している箇所がいくつか見られました。そういった場所では「Googleマップ上だと海上を走っていることになっている!」なんて場面も。能登半島一帯、どこもかしこもまだまだ工事中で簡易信号機だらけ、少し進んではストップ、車線も左右に行ったり来たり……が延々と続くのですが、それでも私たちのような旅行者も含む一般車両が通れるまでに整えられていることがとても有り難く感じました。
なおこれらの写真は友人の車の助手席から撮影したのですが、走行中ということもあって画面の下にダッシュボードが写り込んでいます。トリミングをすることも考えましたが、できるだけリアルな画角を損ねないように今回は敢えて残しています。

■撮影環境:29mm, f/9.0, 1/200秒, +0.3段, ISO 200, WB自然光オート, PC:スタンダード

撮影環境:31mm, f/9.0, 1/200秒, +0.3段, ISO 200, WB自然光オート, PC:スタンダード
今回の旅の最後は岐阜県の長良川鉄道の駅で友人と別れて帰路につきました。長良川は鵜飼で有名なためか、長良川鉄道の後方には大きな鵜のぬいぐるみが置いてあり、流れゆく景色を眺めていました。単線の線路越しの光景はなんとも旅情を感じます。

■撮影環境:34mm, f/2.8, 1/640秒, +0.7段, ISO 400, WB自然光オート, PC:ビビッド
初日は石川県の小舞子海岸で日没を迎えました。海岸沿いで夕景を撮影する人(私)、ジョギングする人、自転車で帰路を急ぐ人などがいる中、岸壁に座る青年を見つけ、声を掛けて撮らせていただきました。この海岸へ来たのは2022年の9月以来4年ぶりでしたが、前回は撮れなかった綺麗な夕焼けに出会うことができました。

■撮影環境:36mm, f/2.8, 1/125秒, -0.3段, ISO 400, WB 5560K, PC:スタンダード
能登半島の入口にあたる志賀町でランチにお刺身定食をいただきました。自身の席に座りながら旅の記録としてお料理を撮るには、ズームの具合とピントの合う距離、そして絞り開放F2.8が使える明るさ、そしてお刺身の鮮度が伝わる写り具合という点においてこのレンズでよかったと思った場面でした。「時価」と書かれたメニューにドキドキしましたが、こちらで1,800円!鮮度とこのボリュームを考えるとリーズナブルに感じられました。

見附島から南に約3.5kmの恋路海岸へ立ち寄りました。朱塗りの鳥居と背後の弁天島の組み合わせがフォトジェニックなスポットですが、この日は雨こそ降っていませんでしたがあいにくの曇り空。島の緑をより印象的に表現するため、ピクチャーコントロールはフレキシブルカラーのTender Clear を選択しました。ここはお天気の他、潮が引いたタイミングでまた訪ねてみたいです。

■撮影環境:49mm, f/8.0, 1/500秒, -0.3段, ISO 100, WB自然光オート, PC : Tender Clear(フレキシブルカラー)
友人と別れて長良川鉄道に乗車したのはここ、美濃市駅。とてもレトロでかわいらしい駅の向こうに、これまたレトロ、かつ貨客混載の取り組みによるヤマト運輸のラッピングとのツートンカラーの車両が停められていました。自然豊かで緑に包まれた駅に赤い車両が印象的で写真に収めました。

■撮影環境:57mm, f/4.0, 1/125秒, +0.7段, ISO 400, WB自然光オート, PC:ビビッド
蓮池で、蓮の葉の影にいるアマガエルと出会いました。もともとこれら自然界の小さな生き物は全般的にあまり得意ではない筆者ですが、体長2cmほどのかわいらしいサイズに思わずレンズを向けました。できるだけ大きく撮ろうと望遠側で近づいて撮影したのですが、これがマイクロ(マクロ)レンズではより細部まで大きく写る一方で、本レンズでは周囲の葉も入れることでこの小さなサイズ感も伝わり、個人的にはちょうどよい距離感と写り方で撮影できました。手足の指をしっかり広げた様子がまた可愛らしく感じられます。

■撮影環境:70mm, f/2.8, 1/1000秒, +0.7段, ISO 100, WB 4350K, PC : Kota-Green(フレキシブルカラー)
まとめ
多くの標準ズームレンズの広角側が35mm判換算で24mmまたは28mmに対して、本レンズは25.5mm相当と24mmには及ばないものの、28mmよりは確実に広く、また望遠側はレンズ交換なく105mm相当までズームが使えるため、日常から旅先での撮影にはこの1本で十分に対応できる方も多いのではないでしょうか。絞り開放がズーム全域でF2.8という点も加味して、現在お使いの標準ズームレンズのズーム倍率や開放F値に物足りなく感じている方にはぜひおすすめしたい一本です。

■撮影環境:21mm, f/8.0, 1/500秒, +0.7段, ISO 100, WB自然光オート, PC:スタンダード
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、OM SYSTEM ゼミ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員















