鉄道写真の入門にも100-400mmの新たな選択肢|ソニー FE 100-400mm F5.6-8 OSS

山下大祐
鉄道写真の入門にも100-400mmの新たな選択肢|ソニー FE 100-400mm F5.6-8 OSS

はじめに

2026年のEマウントレンズは100-400mm望遠レンズの話題に事欠かない。Gマスターレンズの新発売に続いて、今度は開放F値が抑えられた小型軽量モデルが発売された。FE 100-400mm F5.6-8 OSSは実勢価格15万円程度と手に取りやすく、Gマスターの2機種に比べても圧倒的に小型軽量に仕上がった1本だ。本レンズのスペック上の開放F値は、ズーム域による変動がともなうF5.6-8.0というもの。鉄道写真のような高速シャッターを求められる使用シーンにおいて、満足に撮影できるか心配に思う入門者も少なくないだろう。また、比較的リーズナブルである本レンズの、描写やAF駆動についても気になるところだ。

今回の試用では、いくつかの鉄道シーンで本レンズを試し、自分なりの使用感を正直にお伝えしようと思う。上級モデルとの差はどれほどなのか。軽量ズームレンズとしてのハンドリングはどうなのか。導入検討中の方の一助となれば幸いである。

スマートな鏡筒、扱いやすいピントリング

本レンズは、最大径78.2mm、最大縮長164.5mmの本体が654グラムという諸元である。望遠側にズーミングした際は、鏡筒が一段で伸びて全長182.5mmとなる。そして同社の100-400mmレンズでは唯一、三脚座(カメラではなくレンズ側に備わる三脚固定用の台座)がない。つまりカメラを支点に保持したとしても、レンズの自重によってマウント部に掛かる負担は限定的ということだ。それだけ本レンズが小型軽量であることを意味している。しかしながらレンズ外装は樹脂製で軽量化に寄与する一方、マウント部の強度をはじめズーミング機構の動作感などは、決して安かろうというつくりには感じない。ピントリングは前後長にゆとりがあり、手持ち撮影時に指先での操作がしやすい場所に設けられている。操作感は直感的で意外にも滑らか。おまけ的存在ではなく、いざとなったらMFによるピント合わせも十分に可能な印象だ。スイッチ類は、フォーカスリミッターとAF/MF切換が一体化したもの、手ブレ補正機構のON/OFF、ワイド端でのズームロックの3種が備わる。手ブレ補正モード切換やDMFのON/OFFなどは省略されているが、こういったレンズでは極力物理スイッチは排除して、思わぬ誤操作を防ぐほうが喜ばれるのではないだろうか。

レンズ前端からマウント部直前まで外径変化や凹凸が極めて少ないフラッシュボディ。スマートな印象だ
400mm使用時でもハンドリングに無理のない全長に収まる
フォーカスリミッターとAF/MF切換スイッチが一体化した。ズームロックスイッチは右側に備わる

走る列車にピント追従

通常の編成写真を撮るのに昔は線路に予めピントを合わしておく「置きピン」を行なっていた。被写体が来たタイミングでAFを動かすということが失敗のリスクだった当時としては、確実に1コマは得るという手堅い撮り方だ。しかし象面位相差測距や被写体認識機能を有したカメラの台頭で、いまはAFでピント追従する性能が格段に上がっている。編成写真でもピント追従はむしろ当たり前になってきた。ただ、たとえ高性能なカメラでも実際に光学系を動かすのはレンズである。レンズの駆動がイマイチだとピントを外したり、列車スピードに追従できなかったりしてしまう。FE 100-400mm F5.6-8 OSSは編成写真でピント追従ができるのか。大変気になる点を今回は在来線と新幹線を被写体に試してみた。

焦点距離は220mmで撮影距離はおよそ30m。在来線の特急列車だが速度は時速50キロ程度だ。エントリーモデルとなるα7C IIの最速10コマ/秒で撮影した。連写各コマで合焦しており、写真のとおり無事適コマも得ることができた
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/500sec F8.0 ISO200

こちらは時速300キロ程度で走る新幹線。α9 IIIの120コマ/秒での超高速連写だ。カメラ性能は高いが、1.4倍のテレコンによって絞りはF11とAFには厳しい条件だった。ここでも連写各コマで光学系が上手に動いていており、どれをとっても合焦カットであった
■撮影機材:ソニー α9 III + FE 100-400mm F5.6-8 OSS + 1.4X Teleconvertor 
■撮影環境:1/800sec F11 ISO2500
新幹線のお医者さん「イーストアイ」である。失敗したくない一発勝負だったがズーム間流しで撮影をした。ズーミング中もAF動作は快調。ズーミングによる画角の変化とズームリングの操作量が一定なので、ズーム間流しがしやすいレンズと言える
■撮影機材:ソニー α9 III + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/500sec F8 ISO1600

きちんと繊細な描写

レンズの解像性能を見るためにも、風景を大きく列車を小さく扱うような鉄道風景写真の例を見てみたい。光学レンズは一般的に、画面中央付近の描写と周辺部の描写には差が出るものである。中央でバッチリ解像していても、周辺部では少し解像感に鈍りがあることが普通で、これらの差を上手に補正できるレンズは性能が高く、高額になっていく。また解像感だけでなく、コントラストの低下や色の滲みなどを抑えるのもレンズの能力である。FE 100-400mm F5.6-8 OSSはリーズナブルなレンズであり、上記のような性能をグラフで表したMTF曲線でも、上位モデルとの差は見て取れるが、描写に関しては実際撮ってみたもので評価するのが一番だ。

小さな海水浴場と家並み、サップ遊びの人々と列車が絡んだ。列車周辺については充分な解像を感じる。画面左端を見ると解像感の低下が見える部分もあるが、この程度の差で収まっていれば実用上それほど問題にならないだろう
■撮影機材:ソニー α1 II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/500sec F7.1 ISO320
朝霧の中に続くレールの向こうに現れた朱色の列車。実際の見た目に近しいコントラストで、状況を伝えることができた写真である
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/320sec F6.3 ISO1600
夏空を演出する雲の立体感を見せたかったカット。ローカル駅に停車した列車と、ホームで待つ乗客のシルエットも小さいながら確認できる。明暗それぞれにクリアーで抜けの良い描写が得られ、見せたいものをきちんと見せることができた
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/1000sec F8.0 ISO400

レンズ内手ブレ補正機構

レンズ名の「OSS」はレンズ内に手ブレ補正機構が備わることを示す。αシリーズには多くの機種でボディ内5軸手ブレ補正機構をもっているが、より効果的な補正をするためEマウントレンズでは主に望遠レンズでOSSが採用される。FE 100-400mm F5.6-8 OSSもその一つだ。これによって手ブレしにくい撮影が可能なのと、ノーファインダーとなるような無理な体勢での撮影にもフレーミングがしやすい。

稲の葉を前ボケに入れるためローアングルでモニターを見ながら撮影した。走り去る列車をブラすために低速シャッターを選択するが、手ブレしないように注意が必要。手ブレ補正の恩恵が出た一枚
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/60sec F10 ISO100
流し撮りでは手ブレ補正機構が逆に成功の妨げとなる場合があるが、本レンズの場合、ファインダー内で被写体を追いかけるのは、手ブレ補正機構が効きすぎることもなく自然な見た目で撮影ができた
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/30sec F8.0 ISO100

テレコンが使える

FE 100-400mm F5.6-8 OSSの発表資料をみて一番意外だったのは、テレコンが使えるということだ。たとえ望遠ズームであっても、こういったエントリーモデルの設計ではテレコンの使用が考慮されないことが多い。その点で意外だったということだ。これで簡単に140-560mm F8-11、または200-800mm F11-16という使い方ができるわけだ。開放値がここまで大きくなるということは、露出面で余裕がないのはもちろんのこと、AFの精度やスピードにも少なからず影響はあるだろう。

緑の海のなかをゆくJR釜石線の新型気動車。2倍のテレコンを使えるので、思い切った風景の切り取りができる。抜けや解像感のところで、やはりレンズ単体の写りとの違いは見えるが、AFについては特に不自由はなく使えた
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS + 2X Teleconvertor 
■撮影環境:1/500sec F16 ISO400

小型軽量を生かして望遠スナップ

FE 100-400mm F5.6-8 OSSは小ささ軽さからスナップ撮影の一手としてつかうのも楽しいだろう。普段、広角から標準レンズをつけて街歩きするところを、気分を変えてこのレンズ1本で出かけてみるのだ。当然いつもとちがう視点で被写体を探すのだが、たとえ近い距離にある被写体であっても、クローズアップで切り取るなど工夫すればなんとかなるものだ。被写体認識を列車/人物とこまめに切り替えられるようカメラのボタンをカスタムしておくのがおすすめだ。

歩道の植栽をなめるような視点から、新宿のビル間に見えた鉄道の姿を撮った。いくつか撮ったうち、中央線の2階建て車両と信号のタイミングがうまく一致したカットを選択。ボディ+レンズの5軸手ブレ補正がフレーミングを助ける
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/1600sec F6.3 ISO1600
小さな駅で列車を見送るとき、窓の中に見つけた親子のシルエット。AFを人物認識に切り換えて外の露出に合わせて撮った
■撮影機材:ソニー α7C II + FE 100-400mm F5.6-8 OSS 
■撮影環境:1/500sec F8.0 ISO800

まとめ

FEレンズ100-400mm の三機種目ということで、より手に取りやすい価格帯のレンズとして登場したFE 100-400mm F5.6-8 OSSであるが、光学レンズ製品としての質感や可動部の動きは、価格以上の価値があるように感じた。またどうしてもこの焦点域で高スペックを求めると、機動力が削がれていくもの。その点で機動力抜群の本レンズ、これだけのAF性能と描写ならその存在価値は非常に高いだろう。

 

 

■写真家:山下大祐
1987年兵庫県生まれ 日本大学芸術学部写真学科卒業。鉄道撮影プロダクション勤務を経て2023年独立。
幼い頃からの鉄道好きがきっかけで写真と出会い、作品制作の舞台として鉄道と関わるようになる。幾何学的な工業製品あるいは交通秩序としての鉄道を通して、人や自然の存在を表現しようと制作活動を行なっている。

鉄道事業者広報素材、インフラ、カレンダー、CMの撮影
鉄道誌・カメラ誌等で撮影・執筆
鉄道写真セミナー講師など
株式会社OfficeYAMASHITA代表
日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員

 

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